「トヘトヘ〜!」巡行がはじまる

盗餅馬が30体ほど完成しました。床には大小さまざまな馬が並び、中にはどこか愛嬌のある短足のものもあって、見ているだけで楽しくなります。

12時50分、青年団の有志のみなさんが神社の拝殿前に集まり、出発式が行われました。いよいよ巡行のスタートです。

途中で休憩をはさみながら、約25軒をまわります。訪問先は個人宅だけでなく、商店や歯科医院、仏壇店、さらには地元のコンビニまで多岐にわたります。

水をかけ、祝うという体験

3軒目の仏壇店へ向かう男性に、これからの心境を聞いてみました。「正直に言っていいですか。は〜〜・・・です。真冬ですよ!でもこれから水かけがどんどんひどくなるので、先にやっておきたいです。」と、緊張した表情で語ります。手には、ワラ馬を載せたお盆がしっかりと握られていました。

先導役の和田さんから合図が出ると、青年団が店内へ。「トヘトヘ〜!トヘトヘ〜!」と声を響かせながら馬を差し出し、「おめでとうございます!」と声をかけます。迎える側は「ありがとうございます!」と応え、用意していたバケツの水を思い切り浴びせます。男性は首にタオルを巻きながらも、頭からしっかりと水を受けていました。

5軒目のソフトクリーム店では、若い女性店員が「今年も良い1年になるようにしっかり水をかけていきたいと思います!」と笑顔で宣言し、勢いよく水を浴びせます。びしょ濡れになった男性は「最高です!」と叫び、場が一気に明るくなりました。

川棚グランドホテルでは温泉がかけられ、自動車部品店では子どもたちが水風船を投げつけてきます。「去年からは忖度なしでやらせてもらってます!」と店の男性も楽しそうに話します。

ある個人宅では、2階のベランダから滝のように水が降り注ぎました。それを受けたのは、今回初めて役を担った20代の女性。「水がめっちゃ重たい」と半泣きになりながらも、その場の一体感の中に溶け込んでいきます。

地域に広がる関わり

14軒目は、昨年オープンしたばかりの和菓子店。初めて盗餅を迎える店主は「地元じゃないので最初は何だろうと思いました。でも内容を知りたくて参加しました。YouTubeで予習もしましたよ」と笑いながら話してくれました。

さらに、テレビをきっかけに参加した美容室では、70代の女性店主が「絶対にお酒をかけてあげようと思って」と、日本酒を勢いよく浴びせます。「今年も51年目をがんばります!」という言葉が、場に響きました。

冷えた体と、あたたかい時間

夕方4時を過ぎると雪が降りはじめ、冷え込みが一気に厳しくなります。何度も水を浴びた青年団の人たちからは「もう水を被りたくない」「水恐怖症になった」といった弱音も聞こえてきました。

最後の巡行を終えたのは18時過ぎ。すっかり日が暮れていました。

その後、川棚神社の参集殿で直会が始まります。机が並べられ、ホットプレートの上では川棚名物の瓦そばが次々と仕上げられていきます。茶そばの上に錦糸卵、牛肉、青ネギ、海苔、レモン、そして紅葉おろし。鮮やかな一皿が完成しました。

さらに、おでんやくじらベーコンなども並び、場は一気に賑やかになります。冷え切った体が温まり、空腹も満たされていく。その時間は、この一日のすべてをゆるやかに締めくくるようなものでした。