かまぼこ屋から始まった
今回のツアーで印象的だったのは、計画された訪問先ではなく、ふとした寄り道から始まった出会いでした。ロードサイドを走っていると、やけにかまぼこ屋や練り物店が多い。そんな違和感から立ち寄ったのが、村田豊商店さんです。
話を聞いてまず驚いたのは、「ニッスイやマルハといった大手水産会社の発祥が下関だった」という事実でした。さらに、明太子も実は下関がルーツだという話もあり、思わず「全部持っていかれているまちじゃないですか」と笑いが起きる場面も。歴史としては確かに存在しているのに、それが現在のブランドとして結びついていない。このねじれこそが、ローカルコンテンツの種なのではないかと感じました。
クジラをどう食べさせるかという問い
今回のテーマのひとつでもあったクジラについても、かなりリアルな話が交わされました。クジラは美味しい部位もあれば、クセが強いものもある。世代によって評価も大きく分かれる食材です。だからこそ議論になったのは、「そのまま出すのか」「加工して届けるのか」という点でした。特に印象的だったのは、入門編としてのクジラという考え方です。いきなり強いクセのあるものではなく、食べやすく加工したものから入ってもらう。その上で、少しずつ本来の味に触れていく。これは単なる商品開発ではなく、文化の伝え方そのものだと感じました。さらに議論は進み、「万人向けにするのか」「コアなファン向けにするのか」というターゲット設計へ。9割に広げるのか、1割に刺すのか。その判断が、商品そのものを大きく左右するという話は、非常に実践的でした。
ローカルコンテンツはストーリーで成立する
もうひとつ大きな学びだったのは、この取り組み自体が商品開発ではなく“コンテンツづくり”として設計されていることでした。完成した商品を売ることがゴールではなく、「どうやって考えたか」「誰とつくったか」というプロセスそのものをコンテンツにしていく。その中で、高校生の意見を取り入れたり、地域の人と議論したりすることが価値になる。つまりローカルコンテンツとは、完成品ではなく過程そのものなのだということが、現場での対話を通して見えてきました。
知られていない価値はすでにそこにある
下関には、フグだけではなく、クジラや練り物といった豊かな食文化があります。しかし、それが今のイメージとして定着しているかというと、そうではない。だからこそ重要なのは、「新しいものを作ること」ではなく、「すでにあるものをどう見せるか」という視点です。今回のような対話を通じて、その価値を言語化し、再編集していくこと。それ自体がローカルコンテンツの本質だと感じました。
偶然の出会いから始まり、議論が生まれ、アイデアが形になっていく。その一連のプロセスが、まさにローカルコンテンツが生まれる瞬間だったのかもしれません。